10月12日 老犬君と最後の散歩

もうすぐハロウィンです

 

こんにちは

気がついたらもう10月も半ば、あと三ヶ月もなく2024年が終わってしまうのですね。

今年がどんな年だったのかを振り返るにはまだ早いかもしれませんが、老犬君が亡くなって私の心に大きな穴ができてしまった年でした。

老犬君が亡くなってから次々と不思議な事が起きて、そうこうしているうちに、子供の頃に起きた事など過去の体験を思い出しました。

そして、これまでの心の持ち方なんかを考えさせられる気持ちの転機を迎えた年かも知れません。

今日はその不思議なことの一つで、老犬君が亡くなった直後の話をしようと思います。

この人はやっぱりおバカになってしまったのかしらと思うかもしれませんが、最後までお付き合いください。

老犬君が亡くなった晩はシトシトと雨が降りました。

翌朝は曇り空から晴れて虹が出ました。

老犬君はその虹を渡って天国へ行ったのかな、と誰もが思っていました。

でも、夕方になって魔女さんが一緒に犬の散歩に行こうと誘って来ました。

彼女の愛犬君を歩かせてあげると言うのです。

いやいや、歩いてあげるのは私の方じゃないの?と思いながらも一緒に行く事にしました。

魔女さんの愛犬君は私に紐を持たれると、ゆっくりゆっくり歩きました。

まだ5歳の若い犬なのに疲れているのかしら?と思う程ゆっくりでした。

そして途中で私の顔をチラチラと見ます。

いつもの愛犬君はスタスタと歩くのに、私の顔色を横から窺っているように歩きました。

私は心の中で、私と歩くのが納得いかないのかしら、なんて思っていました。

そこで魔女さんが、何か気づいたかと聞いて来ましたが、何を言っているのか理解できませんでした。

散歩も後残り5分ほどの所に来た時、愛犬君の鼻が私のふくらはぎに触りました。

ゆっくり後ろを歩いていたのに、急に右足、左足と順に触って来ました。

振り返って見ると、愛犬君はうっとりと恋をしたような目で私を見ています。

そこで、初めて気がつきました。

まさか、老犬君?

老犬君は年を取って来てからはゆっくりゆっくり歩きました。

耳が聞こえなくなり、最後は目も悪くなったので夜の散歩ではどの人が私なのかを確認するために匂いを頼りに側に寄って来ました。

毎晩、私のふくらはぎに鼻がぶつかっていたのでした。

老犬君?恐る恐る愛犬君の顔を見ると、笑顔で私を見ていました。

魔女さんを見ると魔女さんもやっと気づいた?と笑顔で私を見ていました。

涙が溢れました。

老犬君たら私に会いに来てくれたの?

泣きながら愛犬君に抱きつこうとしましたが、私の驚いた顔が老犬君を怯えさせたようです。

愛犬君は私の腕からすり抜けるように離れて行きました。

魔女さんは老犬君が愛犬君の体から出てしまったので愛犬君も我に返ったのだと教えてくれました。

もっと早く気づけば良かったのに、鈍くてごめんね。

お化けになって会いに来てくれて、私との散歩を楽しそうに歩いてくれていました。

こんなに簡単に会いに来れるなら毎晩でも来て欲しいと思いましたが、魔女さんと愛犬君には大変な事なようです。

魔女さんは時々独り言のように、あなたはここにずっと居ちゃダメよ。

愛犬から出てってね、と言っていたのが何を意味していたのか、やっと気づきました。

中に入った老犬君に愛犬君の体を返してくれるよう言い聞かせていたのでした。

魔女さんは老犬君がこのまま居着いてしまったら愛犬君が戻って来れなくなるので、どうしようかとハラハラしていたのだそうです。

老犬君が出ていってホッとしていました。

私は老犬君にずっと居て欲しかったのですが、元々の愛犬君が戻って来れなくなるのも困ります。

何の役に立つわけでもないのでしょうが、老犬君が愛犬君に入っている時の特徴を理解しました。

その時は愛犬君は左の耳だけが動きます。

そして老犬君が生前していた時のように歩いてくれます。

愛犬君が体をプルプル震わせると老犬君が体から出て、元の愛犬君に戻るようです。

単なる思い込みかもしれません。

でも、教えたわけでもないのに、全然違う種類で癖も違う犬の愛犬君が老犬君のような動きをしたので、私は老犬君が最後のお別れに来てくれたのだと思いました。